以前のコラム「睡眠不足で太るってホント?睡眠時間と肥満の密接な関係」でも触れていますが、生活習慣病等の疾患や肥満は、睡眠不足が大きく関係していることをご紹介してきました。また現代日本における睡眠負債の問題は、かなり深刻であるという警鐘も近年高まっています。
睡眠と疾患の関係性は、今まさにホットな研究分野でもあり、様々な新しい研究成果が報告されています。2018年夏、米ノースウェスタン大学が発表した内容によると、一晩の徹夜で、遺伝的に、または生理学的に代謝がどのように変化するのかを調べる実験を行ったところ、概日リズムの調節に関わる遺伝子や、たんぱく質が変化し、皮下脂肪組織の代謝に関与するDNAのメチル化が、広範囲に起こることが報告されました。
これは簡単に言うと、人間の体は睡眠不足を感知すると、骨格筋組織を減少させたり、脂肪の貯留を行うような変化が現れ、肥満や2型糖尿病のリスクが高まる可能性があるということ。少しびっくりするような結果かもしれませんね。
人によって必要な睡眠時間は多少異なりますが、成人は概ね1日7.5時間以上の睡眠が必要と言われています。睡眠負債は気付かないうちに蓄積し、ある日突然健康リスクになることもあります。ぜひ、ご自身の睡眠時間や質について、一度見直してみてくださいね。
十分な睡眠時間を確保出来ないときは、質を向上
日々忙しく生活していると、睡眠時間が削られてやむ無しという場面はあるかもしれません。睡眠には十分な時間を確保することが大前提ですが、それが難しい場合は、せめて睡眠の質を上げる努力をしたいもの。
例えば、不眠と呼ばれる症状には、床についてもなかなか眠れない「入眠障害」、不必要に目覚めてしまう「途中覚醒」、早い時間に目覚めてその後眠れない「早朝覚醒」、寝ても疲れが取れない「熟睡障害」という4つのタイプがあります。
ご自身の睡眠が、いずれかのタイプに当てはまっているようであれば、適した対処法を講じてみましょう。
入眠障害 | 精神的な問題、不安や緊張が強い時に起こりやすい。スマホやパソコンの画面が発するブルーライトが睡眠に悪影響を及ぼすことがあることも。 |
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途中覚醒 | 中高年に多く、睡眠中に何度も目が覚めたり、一度起きたあとなかなか寝つけなくなる。無呼吸性症候群で呼吸に問題がある場合や、うつ症状、むずむず足症候群や皮膚疾患などが原因となる場合もある。 |
早朝覚醒 | 高齢者に多くみられ、起床予定時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまう。早朝に眠りが浅くなる原因としては、ストレスによる自律神経の乱れや、日中の活動量の低さが原因となる場合も。 |
熟睡障害 | 十分な睡眠時間を確保しているにもかからわず、熟眠感が得られない、または少ない。上述の3症状と複合的に生じる場合が多い。 |
快眠に導く生活習慣とは?
規則正しい生活リズム
人間の身体は、概日リズム(サーカディアン・リズム)によって、活動と睡眠(休息)に適した時間帯が定まると言われています。このリズムに乱れが生じると、睡眠にも悪影響があるため、夜眠りにつく時間や朝起きる時間は、できる限り同じ時刻に定めるようにしましょう。
食事は3時間前まで、お風呂は1時間前までに
眠るタイミングで身体がリラックスした状態であることは、入眠をスムーズにし睡眠の質を向上させる上でも大切なことです。
日中は活動的にし、適度に身体を疲労させよう
スムーズな眠りには、肉体的に適度な疲労が必要です。頭脳労働が多い方や、外出が少ない主婦の方は、日中30分程度の散歩を積極的に行うだけでも、睡眠の質が上がります。
あるいは眠りにつく30分前までに、ストレッチ運動などを行い、身体を十分にリラックスさせるなどして対応しましょう。
腸内環境を整えれば快眠となり、またその逆も然り
睡眠を促すメラトニンの原料となるトリプトファンは、腸内で作られます。つまり、腸内環境が悪いとメラトニンがうまく分泌されず、睡眠不足につながる可能性が。また、興味深いことに、睡眠不足が続くと、概日リズムの乱れから自律神経の働きが低下し、腸内環境バランスが崩れるという相関関係にあり、まさに睡眠と腸のデフレスパイラルという怖い状況に。
睡眠の質を高めるためにも、腸内細菌バランスを良好に保つことは大変重要です。
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