腸内フローラ(腸内細菌)のバランスを左右するのは、食事だけではありません。腸が「第二の脳」と言われることでも分かるように、腸は内的・外的な変化を敏感に察知し、まるで意思を持つかのように行動します。ストレスが長期間続くと、便秘や下痢などの症状が発症し、腸内環境を更に悪くするきっかけとなり、負の連鎖を引き起こしてしまうこともあります。
現代社会の中で、ストレスなく生きることは難しいものです。しかしストレスを軽減したり、うまく逃したりする方法がないわけではありません。大きく持ち崩す前に軌道修正するには、レジリエンス(回復力)をうまく機能させ、舵取りを行う必要があります。腸に悪影響を与える要因とは何かを正しく把握し、対処策を講じるよう心がけてゆきましょう。
"食べる量"はもちろん、"食事の質"も腸内環境に大きな影響を与えます。過食や肉食、過度な偏食は、特に腸ストレスの原因になりやすいものです。ありふれたことかもしれませんが、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂り、腸に優しい食生活を念頭に置くことが大切です。次に”食事の質”を高める方法として、シンバイオティクスの観点から食事内容を見直してみましょう。安定感のある腸内環境を目指す、一番の近道であると言っても過言ではありません。
極端な食事制を長期間継続すると、腸内環境が乱れ機能不全に陥る場合も。あるいは食事量や食事内容の過度な制限は、筋肉量をへらすことになりかねず、サルコペニア肥満やロコモティブシンドロームの呼び水となる等、腸内環境以外の不調を生む原因にもなりかねません。「脂肪を減らして、体重を落とす」を目指し、ダイエット計画をたてることが大切です。くれぐれも短気は損気にならないように。
昨今、睡眠不足の健康に対する悪影響(睡眠負債)が認識されつつあります。睡眠不足は体内時計を狂わせるだけでなく、自律神経の働きを乱します。その結果、腸内環境も悪影響を受けてしまうドミノ倒し状態に。腸内環境の悪化は快適なお通じの妨げになるだけでなく、睡眠の質も低下させる要因となることも近年わかり始めています。
脳腸相関という言葉が近年注目を集めています。これまでも心の状態が腸の活動に作用することは知られていましたが、腸内環境の善し悪しがメンタルヘルスに影響を及ぼす逆方向の作用の存在を示した言葉です。生きる上でストレスを少なくすることはできても、ゼロにすることはできません。少々のストレスには負けない・折れないことを目表現する言葉に、レジリエンス(回復力)という表現があります。心も腸内環境もレジリエンス(回復力)を備えることが大切だと言えるでしょう。
歯周病の原因菌として知られるジンジバリス菌という菌が、食事や唾(つば)と一緒に腸に送り込まれると、腸内細菌バランスを乱し、腸のバリア機能が低下、その結果、血液中に細菌由来の毒素が増加すると言われています。このようなバリア機能の低下は、全身で炎症を起こす火種となり、ひいては糖尿病や循環器系の疾患の原因になる可能性が指摘されています。
腸のおもしろ話 第5回 歯周病が腸に影響?! あなたのお口と腸はつながっています STOPインフラメイジング!体内の炎症を無くし健やかに
蓄膿症や中耳炎、マイコプラズマ肺炎など細菌由来の疾患や感染症治療には、抗生物質(抗菌剤)が用いられます。これらの薬は病気の治療に必要なものですが、人体に害を与える細菌とともに有用菌もろとも殺してしまいます。その結果、腸内の善玉菌が減少し悪玉菌や日和見菌の割合が増えて、腸内細菌バランスが崩れてしまうのです。これは菌交代現象と呼ばれる症状で、人体の抵抗力や免疫力を著しく落とす原因になることも。感染症にかかった場合、抗生物質(抗菌剤)の利用が最小限に収まるよう、日頃から免疫力を鍛えておかなければなりません。
睡眠不足に密接な関わりがあり、腸内環境胃にダイレクトに影響を与えるものではないものの、注意をするべき症状の一つとして、パソコンやスマホによる眼精疲労があります。デジタル機器が発するブルーライトは脳を過剰な興奮状態にさせ、睡眠障害や目の奥の痛み、頭痛、めまい、嘔吐などの症状があらわれ、睡眠だけでなく生活自体の質を低くする恐れがあります。
老化の原因と言われる活性酸素やAGE(糖化)は、腸にとっても大敵。悪玉菌を増長させ、加齢とともに衰退しがちな腸内環境の老化を加速させます。
腸にかぎらず、身体の冷えは人体にとって悪いことだらけ。血流を鈍らせ、代謝が低下するため、免疫力も低下。生活の質を低下させる大きな要因に。冷えの原因は様々ですが、女性に多いのが血流を促すポンプの役目を担う筋肉量が少ないことや、運動不足。身体を適度に動かしたり、お風呂にゆっくり浸かるなどして体温アップに努めましょう。またクーラーのあたり過ぎなど夏場の冷えにもご注意を。