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茶人は長命なり 〜 千利休

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茶の湯と一汁三菜

茶の湯の文化を大成した千利休(1522~1591)は、「家は漏らぬほど、食事も飢えぬほどでこと足ることなり。これ仏の教えであり、茶の湯の本意なり」と語っています。
『住まいは雨漏りしなければ良いし、食事も飢えなければ十分である。同じように茶の湯も質素が良い。』という意味です。

茶人として、戦国時代の頂点に立っていた千利休は、「茶の湯とは、ただ湯を沸かして茶をたて、飲むばかりなり」と弟子に伝えたと言われているように、これが、戦国の武将たちをとりこにした、侘茶(わびちゃ)の奥義ということでしょう。
侘茶は抹茶と茶せん、そして茶器の文化で、静寂の美を楽しむもの。
この茶の湯文化が、戦国武将たちのたしなみのひとつとして、流行しました。合戦の合間に、心の安らぎを求める武士たちにとって、禅の精神が底流する茶の湯は、大変魅力があったのでしょう。
「一汁三菜」という献立は、懐石料理の基礎。現代につながる和食文化はこの流れを汲んだもので、千利休が確立しました。懐石というのは、本来、茶人が茶室にお客を招待したときに、自分の手料理でもてなすことを意味しました。

戦国武将のサプリメント

誰よりも茶の湯を好んだ織田信長(1534~1582)は、名物茶器の無類のコレクターとしても有名で、軍功のあった武将に、領土の代わりに高価な茶器を与えていました。茶の湯は武将たちにとって重要な教養であり、他者に遅れをとるまいと、皆、習得に熱中しました。例に漏れず、秀吉や家康も、茶の湯に夢中になっています。
このように、武将の心を捉えて離さなかった茶の湯。その理由は、栄養成分から見ても納得できるものです。ひとことで言うと、心と身体の「癒しの効果」。
抹茶に豊富に含まれている、うま味成分のテアニンは、アミノ酸の一種です。リラックス効果が高く、緊張とストレスで強ばった心と筋肉を解きほぐす働きがあり、かつ即効性が高いのが特徴。
また茶葉に含まれる抗酸化成分の中でも、特に優れた効果を発揮するのがカテキンです。心臓病やガン、認知症、老化などの一因である活性酸素を除去する作用が強いといわれています。ビタミンE、C、ミネラル、アミノ酸なども豊富に含まれています。
茶の湯にたしなみを持った武将に長寿者が多いというのも、茶葉の影響があったのかもしれません。
茶聖として頂点に立った千利休でしたが、秀吉とトラブルになり、天正19年(1591)に自害。71歳でした。このようなアクシデントがなかったら、更に長生きしていたのではないでしょうか。

執筆者紹介

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食文化史研究家 永山 久夫
文化研究所、綜合長寿食研究所所長。西武文理大学講師。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年にわたり調査している。新聞の連載などの執筆活動他、テレビ・ラジオ出演、講演等で、古代食や長寿食、情報化時代の頭脳食のテーマを解りやすく解説し人気。著書『武将メシ』(宝島社)、『大江戸食べもの歳時記』 (新潮文庫)など多数。
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