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腸のおもしろ話 第8回 腸内環境を侮るなかれ。糖尿病リスクを腸活で減らす(後編)

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皆さん、こんにちは。アメリカで修行中のサンスター研究員・しみず師範です。わたしがいるニューヨーク州バッファローは、日本でいうと旭川くらいの緯度に位置しており、今年の夏は昨年に比べても涼しい夏を過ごしました。一方、西海岸では高温に見舞われるなど、日本同様、気候の乱れたシーズンでした。

腸内環境と糖尿病をテーマにした前編に続き、後編となるこちらのコラム。前回は2型糖尿病のお話が主だったので、今回は1型糖尿病についてご紹介します。

先天性・遺伝性の1型糖尿病と、生活習慣によって発症する2型糖尿病

糖尿病とは、食べたものから分解されたブドウ糖が体内(主に筋肉や肝臓)に吸収されにくくなり、ブドウ糖が血液中に溜まりすぎてしまう病気です。ブドウ糖の吸収には膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが大きく関与しています。

1型糖尿病とは?

主に小児~青年期に発症する糖尿病で、日本の糖尿病患者全体のおよそ5%程度と言われています。小児糖尿病、インスリン依存型糖尿病と呼ばれることもあります。自己免疫がすい臓のβ細胞というインスリンを作る細胞が破壊することにより、体内のインスリンの量が絶対的に足りなくなることで起こります。原因は遺伝子要因などが考えられていますが、近年、世界的に1型糖尿病患者が増加傾向にあることから、日照時間などの環境要因が関係していると見られています。

2型糖尿病とは?

腸と糖尿病記事前編で詳しく解説していますが、主に中高年に多くみられる糖尿病で、日本の糖尿病患者全体のおよそ95%を占めます。インスリンの出る量が少なくなる、インスリンが働きにくくなる等の症状から、血液中のブドウ糖が溜まりすぎる傾向に陥り、発症します。遺伝要因がないとは言い切れませんが、一般的に食事や運動などの生活習慣が関係している場合が多いと言われています。特に、日本人は「倹約遺伝子」を持つ人などがいる影響もあり、痩せていても糖尿病を発症することがあります。欧米の人たちと比べ、インスリン分泌量が少ない場合があり、うまく血液からブドウ糖を肝臓や筋肉に取り込むことが出来ず、糖尿病を発症してしまいやすい傾向があるためです。

1型糖尿病の発症リスク要因とは?

1型糖尿病は遺伝が主な要因とされていますが、発症に地域的な偏りも見受けられることから、日照時間など環境要因が遠因として存在する可能性があるとも言われています。

例えば、北欧やイタリア(特定の地域)で多く、フィンランドでは糖尿病患者の二人に一人が1型糖尿病といわれています。最近の1型糖尿病の発症数はデータが示すように増加しており、フィンランドの統計では、15歳以下の1型糖尿病の発症率は、1950年代では10万人当たり12人であったのが、2006年では65人にまで上昇しています。遺伝的な要素だけではこういった増加を説明するのが難しく、環境要因に目が向けられています。

日照時間以外の環境要因としては、牛乳の摂取、抗生物質の投与や腸内細菌などの影響が考えられています。

1型糖尿病のリスク・コントロールに、腸内細菌が関与する可能性

前の章でも少し触れましたが、1型糖尿病と環境因子について、どんな情報が得られているか見てみたいと思います。

ケース1:マウスを用いた動物実験

このマウスは1型糖尿病を発症するマウスで、実験の時には免疫に関係する機能を失わせたものを用いています。これらのマウスを①通常の環境(一定の条件有)と②無菌の環境で飼育した結果、①で飼育したマウスは1型糖尿病の発症が抑えられるのに対して、②の環境では1型糖尿病を発症しやすいことが示されました(※1)

研究知見
腸内細菌の多様性に乏しい、無菌状態では1型糖尿病になりやすい可能性

ケース2:プロバイオティクス投与による実験

プロバイオティクスを投与すると1型糖尿病のリスクを下げるというヒトでの研究結果もあります(※2)。これは特定の遺伝子型(DR3/4)を持ち1型糖尿病リスクが高い新生児を対象に、プロバイオティクスを摂取してもらったもので、生後27日以内にプロバイオティクスを摂取していると、免疫を司るランゲルハンス島での免疫応答異常による1型糖尿病の発症リスクをおよそ60%下げると報告されています。

研究知見
プロバイオティクス摂取が、1型糖尿病の発症リスクを低減する可能性

1型糖尿病患者の腸内細菌叢は、発症をしていない人とは異なり、一部の細菌構成が変化するなど報告されています(※3)。2015年の報告では、発症の1年前の段階で、その後発症する人としない人の間で、腸内細菌叢の多様性に変化が見られ、腸内細菌の中の悪玉菌とされるBlautiaや Ruminococcusの量が増加していることが確認されています(※4)

研究知見
1型糖尿病の発症には腸内細菌の多様性の現象が関与する可能性

ケース3:抗生物質の摂取と1型糖尿病

抗生物質と1型糖尿病の発症の関係については2016年に動物(マウス)を用いたデータで報告されています。この報告では、3つのグループを用い、①抗生物質を投与しないグループ、②低濃度の抗生物質を一定期間投与するグループ、そして③投与と休止のセットを3回繰り返すグループに分けて、マウスの1型糖尿病発症がどれくらい変わってくるのかを比較検討しています。試験の結果、繰り返し抗生物質を投与された③のグループでは、1型糖尿病の発症率が上昇することが示されました(※5)

研究知見
抗生物質の過剰摂取が1型糖尿病の発症に関係する可能性

ただし1型糖尿病は病状のステージにより、どういった対応が必要かということが異なってきます。初期の段階では、インスリンを分泌する細胞を破壊する自己抗体が検出されるレベルから、インスリン補充を必要とするレベルまで様々です。コントロールでは、3つのステージで考える必要があります(※6)。日常のケアとしての運動、食事(食物繊維を豊富に含む)やプロバイオティクス・プレバイオティクスなどの手段と治療を上手く組み合わせながら、予防や症状の進行を抑制していくことが重要となってきます。こういった中で、腸内細菌の機能は重要な役割を持っており、今後も活発な研究が行われていくと考えられます。

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  • (※1)L. Wenら, "Innate immunity and intestinal microbiota in the development Type 1 diabetes." Nature 2008; 455: 1109-1113
  • (※2)Uusitalo Uら, "Association of Early Exposure of Probiotics and Islet Autoimmunity in the TEDDY Study. JAMA Pediatr. 2016; 170: 20-28
  • (※3)de Goffau MCら, "Aberrant gut microbiota composition at the onset of type 1 diabetes in young children." Diabetologia 2014; 57: 1569-1577
  • (※4)Kostic ADら, "The dynamics of the human infant gut microbiome in development and in progression toward type 1 diabetes." Cell Host Microbe. 2015; 17: 260-273
  • (※5)Livanos AEら, "Antibiotic-mediated gut microbiome perturbation accelerates development of type 1 diabetes in mice. Nat Microbiol. 2016; 1:16140
  • (※6)Maria E. Mejia-Leonら, "Diet, microbiota and immunity system in type 1 diabetes development and evolution." Nutrients 2015; 7: 9171-9184
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