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天海の100歳食

もっと見るタグ: クコの実, 天海, 日本食べ物語, 納豆, 長寿

長寿大国・日本

日本は世界一の長寿国で、それを象徴するように、100歳以上の方も多く、これからも、元気な長寿者がどんどん増えていくでしょう。100歳のサラリーマンや公務員、駅員などあたり前の時代となるかもしれません。それを想像すると、楽しくなりますね。
日本は長寿のワンダーランドとなり、世界中から、長生きを目指す観光客がやってくるのではないでしょうか。

徳川家三代に仕えた僧侶・天海

今から400年ほど前に、108歳まで長生きした生涯現役のお坊さんがいました。天宗の僧で「南光坊天海(なんこうぼうてんかい)」と呼ばれた、江戸幕府の初代将軍・徳川家康の信頼も厚い参謀でした。二人が知り合ったのは、戦国時代の終わりの頃で、その後二代将軍秀忠、三代将軍家光と三代に渡り重用されてきました。
あるとき、家光が長生きの秘訣を尋ねたところ、次のように答えたそうです。

「長命は粗食、正直、日湯(ひゆ)、陀羅尼(だらに)、時折御下風(ごかふう)あそばされかし。」

これは、長生きにとって大切なのは、味の濃い料理は避けて粗食とし、正直に暮らし、毎日お湯に入って身体を温め、陀羅尼(お経を読むようにゆっくりと呼吸すること)に努め、時々下風(おなら)くらいはして、張りつめた気持ちを緩めること、という意味です。
天海は聡明であっただけでなく、心穏やかな性格で、機知に富んだ人物だったと分かるエピソードですね。

好物はクコの実と納豆汁

天海は、クコの実を炊きこんだクコ飯と納豆汁を好んで良く食べたそうです。クコは赤い小粒の実で甘味があり、ごはんに混ぜると見た目も味わいも良くなります。干したものは漢方薬としても用いられており、身体の酸化を防ぐカテキンなどの抗酸化成分が含まれています。また中国では3000年も前から薬用とされ、日本でも古くから滋養強壮薬として用いられてきました。
一方納豆汁は、天海が生まれ育った福島県会津地方で、古くから郷土料理として人気でした。大根やごぼう、椎茸、里芋、こんにゃく等で仕立てた野菜汁に、納豆を刻んでたっぷり混ぜたもので、大豆のたんぱく質が納豆菌によって分解されてできたグルタミン酸のうま味が出汁になって、味噌味のよくきいたとろみのある汁に仕上がり、身体が温まります。

長寿の秘訣、納豆汁

納豆に豊富なレシチンは体内で神経伝達物質のアセチルコリンに変わります。アセチルコリンは、記憶や認知、集中力などに深く関わる物質として注目されています。また納豆に含まれるグルタミン酸やビタミンEも血管や身体の老化を防ぐ働きをしています。
そんな栄養面で優れた納豆と、様々なビタミンやミネラルを含む野菜が一緒に摂れる納豆汁こそが、天海の100歳食だったのです。

執筆者紹介

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食文化史研究家 永山 久夫
文化研究所、綜合長寿食研究所所長。西武文理大学講師。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年にわたり調査している。新聞の連載などの執筆活動他、テレビ・ラジオ出演、講演等で、古代食や長寿食、情報化時代の頭脳食のテーマを解りやすく解説し人気。著書『武将メシ』(宝島社)、『大江戸食べもの歳時記』 (新潮文庫)など多数。
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